<計画の経緯>
「自転車好き」に特化した「共通の趣味を媒介とした新しい集合住宅の計画」の第二弾。
都心部では、乗用車から自転車へ個人の交通手段がシフトしているのに加えて、2011.3.11の震災後自転車通勤者が急増している。
この状況を踏まえると、中目黒駅にほど近い敷地において、自転車を媒介としたコミュニティを賃貸集合住宅の 基軸とすることは、ごく自然なコンセプトになり得ることから、よりそのコンセプトを強化した計画となるよう目指した。
住戸数:26戸
<敷地分析>
◯当敷地は、中目黒駅にほど近い東京山の手の都心部にありながら、周辺には「目黒川緑道」や「世田谷公園」があり、利便さのみならず自然を十分に満喫できる良好な住環境にある。また、山手通り(目黒川)から西側に上る丘の傾斜地にあり、北東側の近隣住宅の屋根越しに視界が開けている。また、前面道路を挟んだ南東側隣地には大きな樹木が多数あり、景観上良好な背景となっている。
しかし、それぞれの逆方向は、大きな建物が建っているかいずれ隣接して建物が建てられることが予想されることから、景観的にあまり良好とはいえない。よって、当計画建物の住戸・コモンスペースは、このいずれかの方向に開口やバルコニーを設けることが適当であると思われる。
◯当敷地へのアプローチは、中目黒駅・山手通り方向(南東・北東方向)からがメインとなると考えられるが、その場合、当敷地へは前面道路坂下から上ってたどり着くことになる。そのアプローチに対して、敷地の一番低い東側から建物にアクセスすることが必然であり、そのために敷地北東側を掘下げ、そこに生まれる空地部分にメインエントランスを設定し、その他条例により要求される<駐車・駐輪スペース>などもその奥に設けることが妥当と考えられる。
<提案主題>
◯自転車愛好家に特化した計画とする。特に、縦動線となるエレベーターおよび共用階段は、自転車を伴う移動に適した計画とする。また、各住戸には自転車が置ける土間スペースを、共用廊下に面したエントランス部分に設ける。
◯長く利用価値の高い建物とするために、建物のボリュームを優先することなく(最大限の住戸数確保にこだわらず)、建物自体の質を高めるとともに、当敷地を含めた周辺一帯の住環境保全に寄与する計画とする。
◯高低差のある敷地に対して上下二つの地盤面を設定し、それぞれに対して3層の住棟ブロックを設定する。二つの住棟ブロックは1層ずれた計画となるが、低い住棟(東側住棟)の屋上は、住人の屋外コミュニティースペース<屋上ガーデン>として利用する。
◯建物のアプローチとなる前面道路(坂道)を通して、この建物の特性を印象付ける計画とする。